(3) 産業界への広がり
国防総省で取り組みが開始されたCALSであるが、産業競争力の強化や雇用の創生などの課題解決のために、民間企業でのCALS構想の推進が強く求められるようになった。
1990年代になると、アメリカ国防総省が始めたCALSは、アメリカの防衛産業の産業競争力を大きく向上させる効果がわかってきた。そして、アメリカ国防総省と企業、企業間の自由な連係を可能にし、短期間で共同開発やコスト削減が図られていった、防衛産業はCALS導入で産業競争力を回復しつつあった。
一方、1990年代初めのアメリカ産業界では、自動車、家電などの分野で他国との競争力が弱まっていた傾向にあり、徹底的なリストラの断行、企業体力の回復に懸命に取り組んでいた時期であった。商務省においてもCALSは産業競争力強化の手段であるという認識が強まることとなった。
民間においても以前から適用が考えられていたが、1992年米商務次官は「CALSでアメリカの製造業を再生する」との宣言を行った。商務省の任務は、連邦政府に係わる標準化のための技術要求を確立し、これを国際的な標準化組織や産業界と一体となって調整するなどの活動である。又、標準の選択と開発を支援しつつ、産業標準に基づいて開発された製品のテストを実施している。
このようにして図3−3に示すように、アメリカ産業界ではCALSが本格的に費用削減、国内産業の空洞化、製品リードタイムの短縮を目指して産業界に広まることとなった。
図3−3 アメリカ産業界の競争力強化
出典:NTTデータ経営研究所
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